力強くスコップの上の土を掻き分け潜らんとする奇妙かつ地味なそのフォルム。奇跡はたったひと掬いのスコップによって齎された。その時、歓喜の雄叫びをあげ狂喜乱舞したかどうかは今となっては定かでは無いが俺はその人生の一生分の運をこのスコップひと掬いで使い果たしてしまったのは間違いない。単細胞の小学一年生はここがオケラの楽園だと思い込み、その後も陽が暮れるまで土を掘りまくったが後にも先にも獲れたオケラはこの一匹だけだった。
それでも俺は喜びと達成感に満ち溢れ帰宅後の夕食も喉を通らず母親に入浴を急かされても耳に届くこともなくいつまでもいつまでもオケラを眺めた。
信じる強い心と真っ直ぐな行動力は必ずや奇跡を呼び起こすんだと、突然にして大袈裟に文末を締め括ってもいいですか?
TAGUCHI